「審判」(1963年【仏・伊・西独】 )

審判 [DVD]

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 「市民ケーン」で映画史に名を残す鬼才、オーソン・ウェルズによる、フランツ・カフカの同名小説の映画化作品。主演は「サイコ」のアンソニー・パーキンス
 むむ、しょっぱなからエライものを選んでしまった(汗)。主人公、ヨーゼフ・Kが身に覚えのない罪(罪状は教えてもらえない)で逮捕されるところから話は始まるのだけれど、物語など有って無きが如し。不条理なエピソードの積み重ねで、その瞬間その瞬間の不安感を煽っていく感じ。
 特筆すべきはその映像の美しさ、というか、映像を追っているだけでここまで引き込まれる映画と言うのもそうそう無いんじゃなかろうか。陰影くっきりの白黒画面は「カリガリ博士」や「メトロポリス」のような麗しのドイツ表現主義そのものの美しさだし、ビルの立ち並ぶ様や黄昏時に街灯が遠くで光っている近未来的童話世界はジャック・タチの「プレイタイム」を思い起こさせる。他にも大人数で一糸乱れずタイプを打っている光景は「アパートの鍵貸します」、郊外の物寂しい風景は「時計じかけのオレンジ」、というように近未来・無機質・幻想・悪夢といったキイワードから想像されるイメージがてんこ盛りなのだ。一つの部屋とその隣の部屋がまるで違う雰囲気であり、両者が一つの画面の中に共存している不思議さはディズニーの「不思議の国のアリス」も想起させる。「未来世紀ブラジル」や「ロスト・チルドレン」も相当影響を受けていそう。
 やたらに他の作品の名前を並べてしまったが、「審判」はここに挙げられた映画の良いとこ取りのような作品なのだ。これらの映画の映像や雰囲気が好きな人にはぜひおススメしたい。ただ、それまでの重厚なムードをさりげなく崩してくれるラストシーンにはちょっと笑った。

 ちなみに今日学食でグラタンを注文したところ、ご飯とミそ汁がついてきた。どうやら定食だった模様。隣に座った女の子二人のうちの一人も同じものを頼んでしまったらしく「グラタンにご飯っておかしい」とかなんとか言っていた。いや、むしろミソ汁が。とはおもったが、黙ってとりあえず食す。ジャガイモたっぷりかつケチャップで味付けしたグラタンはそのままでは辛いため、結局ご飯と一緒に食べて緩和する羽目に。
 この不条理な状況は、もしやカフカの祟りか(爆)。