「スイング・タイム(有頂天時代)」(1936年、米)

 明日がレポート提出期限(そして半分も終わっていない)という状況の中で、敢えて映画鑑賞を行う勇気。人はそれを現実逃避と呼ぶ
 というわけで、浮世の憂さを晴らすにはやはりアステア&ロジャースコンビだろう+「THE有頂天ホテル」ヒット記念という理由から選んでみました「有頂天時代」。監督は「シェーン」の名匠ジョージ・スティーブンス。
 一番最初にフレッド・アステアを知ったのはテレビで放映された「ザッツ・エンターテインメント」だが、その当時は「ジーン・ケリーの方が凄いじゃん」と思っていた。しかし、他のミュージカルを何本か見て目を肥やした上で改めてアステアの踊りを見ると、その尋常じゃないスピード、重力を無視しているとしか思えない軽やかさ、そして洗練の極みともいえる動きの美しさに圧倒されてしまうのだ。ジーン・ケリーは動きが派手で、確かにキャッチーではあるけれども、アステアに比べると動きにどうしても重さ、キレの悪さを感じてしまう(そしてケリーの場合、明らかに筋肉質なスポーツマン体型で損をしている。アステアの体は、踊るためだけに生まれてきたとでも言わんばかりの、ぎりぎりまで絞られたしなやかな細身なのだ)。
 この「有頂天時代」でもアステアのダンスは神がかっているとしか言いようの無い出来で、何度見ても感動する。アステアはパートナーを美しく見せることも天才的で、ジンジャー・ロジャースが本当に魅力的だ。
 ミュージカルというジャンルの作品はストーリなどあって無きが如しなのだが、これは割りと見られる方。小物を扱うのがうまく、ちゃんと伏線として機能している。アステア&ロジャースの至高のダンスが見られる上に話も楽しめるのだから万々歳だ。そして、この時代特有のゴージャス感。物質的には現在のほうが豊かなのに、画面からあふれ出る余裕と気品、そして「粋」といったらない。現代の映画では決して見ることが出来ない贅沢である(←ノスタルじじいチックな発言だが、見ればわかる。本当に粋なのだ)。
 今回初めて気づいたのが、アステアの恋敵である指揮者。宇梶剛士にしか見えない。世の中には良く似た人がいるものである。

スイング・タイム(有頂天時代) [DVD]

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