「チャーリーとチョコレート工場」(2005年、米)

 面白かったけど、なんか物足りない。
つまらないことはまったく無いんだけど、ティム・バートンだったらもっと面白く出来るでしょ、という感じも無くは無いというか(←我ながら歯切れの悪い文…。でも実際煮え切らない感じなんです)。
 もの凄い貧乏なバケット家(あの家の傾き具合はまるで「カリガリ博士」!)などの美術なんかはいいんだけど、ギャグに落ち着きが無いのが難点。思わず笑っちゃうけど、笑った後でそれが無理強いされた笑いだったような気がしてくる。腹の底から自然発生した笑いじゃなくて、笑いどころが指定されてる感じ。全体にちょっととげとげしい。
 オープニングのチョコレート梱包過程も全部CGだったのがやや興ざめ。同じバートンの「シザーハンズ」の中にこれと良く似た映像(クッキーを作る機械)が出てくるのだが、そちらはもの凄い手作り感が出ていて素晴らしかったのだ。機械の無機質な冷たさの中に愛らしさとロマンチックさが込められたとても美しいシーンで、ちょっと寂しげな雰囲気がまた良かった。それと比べてしまうと物足りないのである。かといって「マーズ・アタック!」のキッチュさにもやや及ばず。
 ロアルド・ダールの同名原作最初の映画化「夢のチョコレート工場」は以前に見たことがあって、キッチュでサイケなイメージと不気味すぎるウンパ・ルンパ(&歌)が良かったのだが、全体に安っぽい感じとチョコがまずそうだったのが気になり、「まあまあかな…」といった感想しかもてなかった。しかし、このバートン版を見ると「オリジナル版のユルさも貴重かも」と思えてくる。なにしろこのバートン版、画面切り替えが早すぎる。美術がせっかくバートンらしい凝った作りで色使いも綺麗なのに、カメラワークがせわしなさ過ぎてゆっくり見られないため、なんだかストレスがたまってくるのだ。テンポを保つため仕方ないとはいえ、序盤だけでもゆっくり見せてくれればいいのに!
 あと、クリストファー・リーダンディーな歯医者姿が見られたのは嬉しいけど、正直ウォンカパパ関連のシーンは蛇足だと思う。シーン自体は面白いのだけれど、回想が挿入されるせいで工場見学の流れがぶつ切りになっていたのが非常にもったいない。それに、無駄にハートウォーミングな結末になったおかげで工場内で発揮された毒が薄められてしまった上、オリジナル版の”ガラスのエレベーターで飛び出して”スパッと終わる爽快感がまるまるなくなってしまった。毒々しい展開を散々やっておいてのあの爽やかオチが不条理で良かったのだが。
 それから、これは欠点といってよいのかどうかわからないけれど、個人的には小憎らしいクソガキ共のほうがチャーリー君より魅力的に見えた(笑)。ヴァイオレットちゃんなんて普通にしてれば可愛そうだし。ベルーカちゃんがリスたちに連れ去られるシーンは実はこの映画の中で一番ファンタジーらしい不安感と妖しさを持っていたような気がする。チャーリー君は良い子だけど工場に入ってから見せ場が無いのがちょっとね。何もしないで棚ボタ的に幸運が降ってくるのも主役らしくない。
 ただ、ウンパ・ルンパは文句なしに面白かった(笑)。

チャーリーとチョコレート工場 特別版 [DVD]

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