「ネバーランド」
新しめの映画第二弾。「ピーターパン」の作者J・M・バリと、ピーターパンの物語のモデルになった少年たちとの心の交流を描く感動作。
全体的に見れば出来は良く、安心して見られる作品だが、イマイチのめり込むことが出来なかった。確かに俳優陣の演技は素晴らしかった。ジョニー・デップはやはりうまい、そしてかっこいい(しかし夢見がちキャラということで時々「エド・ウッド」に見えてしまった・・・)。ピーター役のフレディ・ハイモア君も評判に劣らぬ良い表情を見せてくれたし、ケイト・ウィンスレットもしっかり役目を果たしていた感じ(「タイタニック」の時はなんとも思っていなかったのだが、「エターナル・サンシャイン」を見てからなんだか好きになってきた)。他の子供たちも頑張っていて、特にマイケル役の子が動作・表情ともに愛嬌いっぱいでとても可愛らしかった。
だが、「傑作!」と太鼓判を押せるかと言うとそうでもなく。鑑賞後はなんとなくモヤモヤ感が残る、不完全燃焼な作品だったのである。
その理由として考えられるのが、視点の散漫さだ。散漫が言いすぎならば、二つに分かれてしまったと言い換えることも出来る。物語冒頭、バリが新作発表の場で落ち込むくだりで、観客はバリが奔放な想像力を持った夢見がちなキャラクターであることを知らされる。そして奥さんとの不仲ぶりが描写され、見ているほうはうっすらと、これがバリの空想と現実のせめぎあいの物語であるということを感じ始める。そしてシルヴィアたちとの出会い。
なるほど、この一家との出会いでバリの心が変化していくのか。と、ここまでは良かったのだが、話は私の知らないうちに少年たちの成長物語にシフトしてしまっていたのである。バリの心境の変化が物語の主眼だと思っていた身としては、なにやら置いてけぼりを食ったような気分になった。で、ただでさえあれれと思っていたところに、子供たちの成長物語がさらに長男のものと三男のものに分かれてしまう。そこにまた劇中劇として「ピーターパン」の物語が絡んでくる。一方バリはといえば、最初のほうこそ無邪気に空想をめぐらせていたのに、後半はいつの間にか大人の判断力を持って子供たちを導く役に回ってしまう。初めは自分のほうが子供みたいだったのに・・・。バリの変化が劇的に描かれなかったことが、やはり最大の不満かも。
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