「ヤン・シュヴァンクマイエル短編集」

 チェコ・アニメーション界の巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエルの短編集。「フード」「石のゲーム」「肉片の恋」「フローラ」「ワイズマンとのピクニック」「スターリン主義の死」「アナザー・カインド・オブ・ラブ」のほか、ドキュメンタリー「プラハからのものがたり」を収録。
 友人に勧められたので、大学のAVルームで鑑賞。DVDのジャケットがなんだかエグいコラージュだったので「大丈夫か!?」とちょっとどきどきしながら見始めたのだが、意外ととっつきやすくて笑える作品だった。コマ撮り特有の不気味な動きを、生身の人間を使ってやることでかもし出される怖さ、可笑しさ。シュールレアリスティックなイメージの連続が猛烈な爆発力になる(「フード」の途中に靴を食べるシーンがあり、チャップリンはシュールな笑いの人だったのだと初めて気づいた)。中には難解な作品もあったが、それらもイメージの組み合わせの新鮮さによって、見ていて飽きることは無かった。一番面白かったのは「フード」の中の「朝食」の部。次は一体どうなるんだろう?と思わせる設定のうまさが素晴らしい。登場人物のおじさんが説明書きを見て、項目チェックごとにいちいち眼鏡をはずしたりかけたりする細かいところも笑いを誘う。最後にはしっかりオチもついて、かなり完成度の高い作品である。
 他に気に入ったのは、「肉片の恋」と「フローラ」。どちらもとても短い作品ながら、しっかり独自の世界を構築している。「肉片」は無常なオチの切れ味のよさに爆笑。肉を吊っている糸が見えるのもほほえましい。「フローラ」は野菜が腐っていくというだけの話だが、小気味良い編集と効果音のおかげで奇妙な快感が生まれている。粘土で作られた人間が秀逸で、最後に一瞬だけぞくっとするほどリアルな表情を浮かべるのが印象的だ。
 この短編集ですっかりはまってしまった。今度は長編に挑戦してみよう。

はまぞうだとビデオ版しか出なかったので、アマゾンのDVD版を。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00077DAXA/ref=pd_sim_dp_3/249-4630972-8025167