「キング・コング」(1933年、米)

 先日ピーター・ジャクソンの「キング・コング」のことを書いたので、改めてオリジナルが見たくなり、大学のAVルームで鑑賞。
 この作品は二年前に一度見たことがあって、そのときは「よくできてるな。さすが古典だな」ぐらいの感想しか持たなかった。さすがに今見ると古臭さは否めないと言う感じ。
 ところが、今回改めて鑑賞してみたら、これがおもしろいおもしろい!前回は一体どこを見ていたんだと言う感じだ。最近よく思うのだが、昔の名作は二度見るに限る。

 遅くなったので、続きは後日。

で、続き。
 とりあえず、冒頭から髑髏島へたどり着くまではカール・デナム氏を見ているだけでご飯3杯はいける。デナムさん面白すぎ。髑髏島でステゴザウルスに遭遇したらいきなり撃つし(それ草食恐竜だから!)、それで倒れたら「生きていたら持ってかえりたいぐらいだ」とか言うし(殺したのはアナタです)、そのくせ生き返ると「まだ生きてるぞ!」って慌てて止め刺すし(オイオイ)、クルーの大半がコング&恐竜に殺された後で「隠れてた」とか言ってひょっこり出てくるし・・・。責任者の風上にも置けません。もうなんか突っ込みどころ満載(余談だが、髑髏島の恐竜はディズニー映画「ファンタジア」の「春の祭典」パートにかなり影響を与えている様子。瀕死のステゴザウルスが尻尾を上げかけて絶命するところとか、襲い来るティラノザウルスの描写とか相当似ている)。
 そんな無責任極まりなしなデナムさんに見惚れているうちに物語はどんどん加速。島に到着してからは見せ場に次ぐ見せ場の連続で息つく暇もない。ウィリス・H・オブライエン渾身の特撮は、さすがに今見ると動きがぎこちなくてちゃっちいという感じは否めないのだが、それを補って余りある、年季の入った骨董品的な味わいが出ていて魅力たっぷりだ。コングの毛並みが細かく動いているのが凄い!と思ったが、あれはコマ撮りのため少しずつコングの模型を動かしていたときに触れた部分が跡になったのだそうで、特に意図したものではなかったらしい。うまくいく時というのは実際運も味方するようだ。
 コングの描写は改めてみるとやっぱり凄い。細かい動きが本当に良く出来ている。捕まえた美女アンの服を脱がせてそのにおいを嗅ぐところなんて、「なるほど、動物だったらこういうことするだろうなあ」と、観客を納得させるのにエロ要素を取り入れた(笑)その発想の豊かさに感心してしまう。ファンタジーの世界に意表をつく形でリアリティーを与える絶妙なつくりである。コングのスケベそうな顔つきも味があってまた良し。
 ニューヨークに舞台が移ってからもこの勢いは止まらない。島で大活躍だったのに都会でいきなり役に立たないドリスコルとか、毎回毎回さらわれてばかりで油断しすぎのアンとか、やっぱり無責任なデナム氏とかの人間陣に笑わされつつ、畳み掛けるようなコングの暴走に目は釘付けである。エンパイアステートビルのてっぺんで複葉機と格闘するコングという画は、「これぞ怪獣映画の醍醐味!」と手を叩きたくなるようなかっこよすぎる出来栄えで、クライマックスに達した次の瞬間に「美が野獣を殺したのだ」という(最後まで無責任を貫き通したあっぱれな)デナム氏の発言でさっと幕を引く切れのよさも見事だった。これほど構成とテンポが素晴らしい映画は最近でもめったにお目にかかれない。
 基本的な感想はこんなところだが、ひときわ印象に残った要素は以下の三つ。
マックス・スタイナーの音楽最高!
ほぼ全編なりっぱなしだったんじゃないかと思えるくらい映像と一体化した音楽だった。調べてみると「風と共に去りぬ」の音楽もこの人が手がけたのだそう。大げさなことは大げさだが、聴いていて胸にずんずん響いてくるような印象的なメロディーとオーケストラによる盛り上げは他の追随を許さない。素晴らしいです。
・ 門から出てくるコング!
前回見たときはイマイチ乗れなかった「キング・コング」だが、このシーンだけは別格。巨大な門をこじ開けてコングがぐわっとその姿を現す演出には鳥肌が立った。巨大感、恐怖感が圧倒的だ。もちろん、二度目の鑑賞である今回もその感激はまったく薄れていなかった。
・ 島→ニューヨークのシーン転換が凄い
浜辺でコングを捕獲したところを見て「これどうやって運ぶんだろうな・・・」と思っていたら次の瞬間ニューヨークに飛んだので本気でびっくりした(見たのは二度目なのに・・・思いっきり忘れてました)。あまりの急さにずいぶん大胆なことをやるもんだと笑いそうになってしまったが、無駄をすっぱりと省いて見せ場の連鎖を途切れさせなかった巧みさに唸らされた。
 とにかく、今から七十年以上前に作られたとは思えない大傑作。みるべし。

キング・コング [DVD]

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