「ミクロの決死圏」(1966年、米)

 政府要人を手術するためミクロ化して患者の体内に入り込むクルーの冒険を描くSF。
(注:ネタバレあります)
 古い映画の宿命と言うか、やっぱり特撮は今見るとチープな感じは否めないが、とても頑張って作っているのはよくわかるし、美的にも悪くないのでそれなりには楽しめる。
 オープニングはなかなか工夫されていて、ドキュメンタリータッチになっているのが新鮮(飛行機の音などで人物の声を消しているところなんかがそう)。さらに、舞台が体内に移るまではBGMが一切ないというのも潔い。緊張感溢れる仕上がりである。
 ただ、体内に入ってからは技術的制約もあって活劇演出がぬるく、どうしてもほほえましい感じになってしまう。おまけに、体内旅行の途中でひとしきり学術的解説を述べた後「なんという生命の神秘だ!」みたいなシメなのは冒険映画と言うより教育映画のノリ。脚本も行き当たりばったりで、不可抗力によってでなくクルーのミスや不和が原因で誘発されるハプニングの数々や、「患者を救う」という第一目標を忘れてがむしゃらに突き進む無謀さは「アルマゲドン」を先取りしていると言ってよい(苦笑)。個人的に気に入ったのはラクエル・ウェルチが抗体に襲われるシーンで、抗体が結晶化するという展開にはなるほどと膝を打った。あと、ウェルチの体中に絡みついた抗体を引っぺがそうと男たちが群がる様は無駄にエロい(笑)。ウェルチの体は、「恐竜百万年」のときも思ったが、ボンキュッボン具合がハンパじゃないのである(←オヤジ発言)。
 だが、なんといっても最高なのはドクター・マイケルズ役のドナルド・プレザンス!「大脱走」では視力低下してたり「007は二度死ぬ」ではスペクターの親玉ブロフェルドになって白猫をナデナデしてたり「ニューヨーク1997」では大統領になって誘拐されてたりと、毎回いろんな意味で大変なことになっている人です。こないだ見た「刑事コロンボ/別れのワイン」も良かったなあ。で、今回もこのひとは期待にたがわず(笑)大変なことになっていて、「白血球に食われる」と言う史上最弱の死に方をします。すばらしい。

ミクロの決死圏 [DVD]

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