「狼たちの午後」(1975年、米)
オープニングから中盤まではとんでもない面白さ。あれよあれよの急展開の連続で、見ているうちにぐいぐい引き込まれ、画面から目が離せなくなってしまう。ドラマなどでよく描かれる銀行強盗モノの定石をことごとく破る予想外のストーリーには(良い意味で)あっけに取られるばかりだ。上質のアイデアをテンポよく詰め込んだ脚本が素晴らしい。緊迫したシーンの中にふっと滑稽味を漂わせる演出も流石シドニー・ルメットといった感じで、緩急自在とはまさにこのこと。また、強盗二人のキャラクターがとても良い。アル・パチーノの演じるソニーは機転が利くけど間が抜けていて、ジョン・カザールのサルはクールで残酷そうに見えて意外とトンチンカン。この憎めないコンビは、見ているうちについつい応援したくなってしまう。
しかし、ここで応援してしまったのが後半になって(別の意味で)効いてくる。なにしろ後半は快調なテンポで進んでいた前半とはがらりと変わって、万事がうまくいかない焦燥感たっぷりの展開なのだ。なまじ犯人達に感情移入してしまっただけにこれが見ていてつらいつらい(笑)。アル・パチーノの切羽詰った表情にこっちまで頭の中が煮詰まってしまいそうだった。
考えてみるとアル・パチーノは精神的にギリギリまで追い詰められるような役(「セルピコ」とか「スケアクロウ」とか)ばっかりやっている。ちなみに私は「スケアクロウ」が大好きである。アル・パチーノとジーン・ハックマンのコンビが、この二人のいつもの殺伐としたキャラからは考えられない可愛らしさなのだ。70年代のアル・パチーノは凄くいい男だし、小さな体からエネルギーが迸っているような演技も大変魅力的だ(最近は流石にちょっと疲れている気がするが)。
ジョン・カザールも良いですねえ。不気味オーラでまくりの風貌なのになんかほのぼのしてるし。台詞もちょっとしかないのに存在感たっぷりで印象的。あと、ランス・ヘンリクセンが若い(髪がフサフサだ!)のもびっくりでした。
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