「恋愛小説家」(1997年、米)

 BSでやってたのをビデオに録り、見ました。同じく録画したゴッドファーザーシリーズも見るのが楽しみ(でも長いんだよなあ…いつ見られるだろうか)。
 この「恋愛小説家」は1997年のアカデミー賞で主演男優・女優賞を獲得しているが、1997年という年は私が本格的に映画の面白さに目覚めた思い出深い年。なにしろアカデミー史上最多11部門を制覇&超特大ヒットを飛ばした「タイタニック」、それを上回る興行成績を上げた「もののけ姫」、TVアニメが話題を集めた「劇場版 新世紀エヴァンゲリオン」、それに鳴り物入りで公開された三谷幸喜監督第一作「ラヂオの時間」と、話題作が目白押しだったのだ。学校の友達もかなりの人数が映画館に足を運んでいたのを思い出す。クラスでの夏休みの共通の話題が映画だったという、今の映画を取り巻く環境からは考えられない盛り上がりぶりだった。また、この年のアカデミー賞は「タイタニック」が圧勝したものの、他にも秀作が非常に多かった年で、その例が「L.A.コンフィデンシャル」であり「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」であり、この「恋愛小説家」だったわけだ。
 …とまあ前置きが長くなりましたが、そんな当時のことをちょっとだけ懐かしみながらだったので、普段よりハイテンションでの鑑賞となった次第です(笑)。これももう十年近く前のことになるのかと思うと感慨深い…。
 映画自体の感想は、結論から言うと、前に見たときよりも面白かった!以前も良い作品だなァと思っていたけれど、改めて見返すと細かいところまで丁寧に作りこまれた素晴らしい作品。人にどんどん勧めたくなる面白さだ。
 とにかく脚本の達者さに感心するばかり。映画が始まってすぐに人物の特徴がわかる絶妙のキャラクター付け。話の転がし方もムリが無く巧みだし、台詞が一つ一つ洒落ていて、退屈する暇がない。嫌味じゃない、洗練された笑いの数々も素敵。そして、ラブコメとしての完成度の高さが抜群だ。一般的に恋愛映画は起承転結がはっきりしていて、中でも「転」の部分は作るのが非常に難しいと感じることが多い。起承はうまく作ってあるのに、大体が転で無理を生じてしまうのだ。「さっきまであんなにラブラブだったカップルがそんな理由で喧嘩になるかいッ」というやつである。それがこの映画ではまったく違和感無く仕上げられていて完璧だった。まさにキャラクター設定の勝利。
 また、その脚本と人物をさらに魅力的なものに完成させた主演の二人の演技が最高。もう、一つ一つの表情が本当に魅力的!ジャック・ニコルソンの苦虫を噛み潰したような顔に腹を抱えて笑い(あの強面かつイッちゃってる顔であのキュートさを出せるところが凄い)、ヘレン・ハントの優しい笑顔には見ているこっちまで思わず顔がほころんでしまう。ニコルソン演じるメルヴィンの「自分の本心をストレートに言うのが照れくさい所為で言わずもがなの失言をしてしまう」ひねくれ者のぶりには感情移入しまくり(よくやっちゃうのよこれ。涙)だ。こういう役をやらせるとニコルソンはひたすら上手い。また、ハント演じるキャロルも素敵。彼女が母親に人生の不安をぶちまけるシーンにはグッと来た。最近こういう人生の無常さを感じるような描写にめっきり弱くなってしまった。「晩菊」を見たときにも思ったけど、これは就活がもたらした思わぬ副産物。人間、一度は人生についてどどーんと考えてみるものですね。
 あと、個人的にはサイモンを演じたグレッグ・キニアが一押し!ほんと上手いわーこの人。二枚目と見せかけて三枚目も上手なところがたまりません。最初に認識したのは「ベティ・サイズモア」だったけど、「ふたりにクギづけ」で惚れました。ちなみに、この二作はどちらも面白いけど、特に「ふたりにクギづけ」の方は最高。ファレリー兄弟の作品って、ギャグが下品だの際どいだのといわれているけれど、実は現在のアメリカ喜劇作品の中で一番コメディらしいコメディなんじゃないかと思う。コメディアンの芸に頼りきりで荒い作りの作品が多い中(そういうのも嫌いじゃないけど)、作りがしっかりしていて安心して見られるというのはかなり貴重だ。
これだけ素晴らしい作品の要素を兼ね備えている本作だが、最後に一つだけ付け加えさせてもらう。

犬が可愛すぎ。もう身悶えしそうなほどにラブリー…。