「シェルタリング・スカイ」(1990年、米)

ベルトルッチ初体験。
映画が始まってすぐのうちは意味深な台詞や共感できない登場人物にちょいと苦労。特に台詞はあれこれと深読みできて、なんかのメタファーだろうかとか今後の展開に影響するのだろうかとかあれこれ考えをめぐらせるうちに煮詰まってしまった。映像は壮大で優雅、魔術的な美しさだが、個人的には大自然の美をどーんと見せる映像美よりも人工的で無機質な冷たい映像美が好みだなーなんて思ってしまい、どうにも入り込めない(「第三の男」とか「審判」とか「2001年宇宙の旅」がモロに好みなんです)。
しかしマルコヴィッチが病気になるあたりから徐々にペースがつかめてくる。坂本龍一の音楽に身を任せるうちいつしか画面と一体化。前半に考えすぎて脳みその理屈っぽい部分が麻痺したのも良かった。残るは感性のみ。そうなるとこの映画、もの凄く皮膚感覚に訴えかけてくるのである。砂の質感、ハエの大群…ざらざらとした感触が手に取るように想像できる。皮膚感覚と言わず、五感全てを刺激する。ほとんど台詞のない後半はひたすら主人公が見、聴き、触れるものを追体験することが出来た。ぽかんと画面に映し出された世界の中にただただ入り込んでいったのである。
でも、映画自体の内容はあんまり好みじゃない(笑)。というか、今の私はこの類の映画に対する受容体を持っていないのだ。もうちょっと精神的に成熟したら、また見てみます。

シェルタリング・スカイ [DVD]

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