「バットマン ビギンズ」

 個人的アメコミ強化週間につき、スーパーマンに続いて鑑賞。予想外の出来の良さにびっくりだー。っていうか脚本が頭良さそうな感じが出ていて凄い。前半に張りまくった伏線を後半で効果的にビシバシ回収してるし。悪漢側の作戦もなかなか凝っていて斬新。よく練られたサスペンス映画を見てるみたいで、コミックが原作だって事を忘れそうでしたよ。
 俳優陣の豪華さも大きな魅力になってる。マイケル・ケインモーガン・フリーマンが同じ画面内に収まってる時は異様なゴージャス感が漂っていてよかった。クリスチャン・ベールバットマンの衣装が似合っていてかっこいいぞ(ただ、アレをかぶると誰がやっても同じに見えるのが悲しい…)。もっとも、個人的には「リベリオン」の方が様になってると思ったけどね。汚職警官ばっかりの中で一人だけ正義を貫いてるのがゲイリー・オールドマンってのははじめ何かの冗談かと思ったけど(笑)、意外とはまっていてグー(・∀・)b。渡辺謙も展開がB級っぽい流れになりそうなところを存在感たっぷりにぐっと引き締めてて良かったよ(キャラ的には完全にかませ犬だったけど)。ただ、豪華は豪華なんだけど全体に配役が無難すぎて適材適所感が微妙に薄く「コレだ!」っていうようなドンピシャ感が得られなかったのが残念。これは贅沢な悩みかな。収穫だったのはスケアクロウを演じたキリアン・マーフィーで、優男ながら気持ち悪ぅい感じが出ていてステキだった。あと、ショックだったのがルトガー・ハウアー。エンドクレジット見るまで気づかなかったよ。なんか太ってるし!「ブレードランナー」の時は不気味&切ない感じが魅力的なイイ男だったのになあ。

以下、ネタバレあります。

 ただ、良く出来てるんだけど、その分こじんまりまとまっちゃって突き抜け感が無いのも事実。燃え度で言ったら昨日の「スーパーマン」の方が圧倒的に上なのだ。師匠(リーアム・ニーソン好演。「ダークマン」はちゃんと見たこと無いから今度見ないと)から薀蓄っぽい教えを受け、後で対決することになるなんて展開は普通とてつもなく燃えるもんである。私はリー・ヴァン・クリーフジュリアーノ・ジェンママカロニウエスタン怒りの荒野」を思い出した。あの十か条には血沸き肉踊ったなあ。でもこの「バットマンビギンズ」では能書きがいちいち説教臭すぎて聞いてるのが面倒になる。だからあんまり燃えない。アメコミヒーローを理詰めで解釈するってのはかなり大胆な挑戦だけど、そのせいでエモーショナルな要素まで相殺されてしまった感あり。やっぱこういうジャンルの映画には「ありえねー!」とか「バカだなあ」とか言いながらワイワイ盛り上がれるような燃えシーンが必要だよね。
 最も致命的なのは、「恐怖」がこの作品の重要なテーマであるはずなのに、見ているこっちがちっとも怖く無いことだ。幻覚の表現が眼の赤い光だけってのはちょいと安直。もっと怖く作ってもいいのに。これも理詰めで作ったがゆえの弊害か。不条理な病気っぽさが消えてしまったのだ。このへんティム・バートン版は上手かった。子供の頃に見た「バットマンリターンズ」はうっすらトラウマもんでしたよ。ホラータッチの演出はバットマンのダークなキャラクターにピッタリだったから、今回もそのあたりを踏襲してくれればよかったのになあ。
あと、映画自体とは関係ないんだけど、字幕があんまり良くない。台詞の量が膨大だから仕方ないかもしれないけど、大分内容を端折っちゃっててちょっと不親切だった。

バットマン ビギンズ 特別版 [DVD]

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