「人民は弱し 官吏は強し」

 星新一が父の星一のことについて書いた伝記。軽いSFばかりが星新一じゃないぜ!と自信を持って人に薦められる力作。読んでてもう星一さんが気の毒でやりきれなくなる。酷いよ役人。
クールで簡潔明瞭、感情を交えないニヒルな文体が星新一文学の魅力だが、今回は文章の端々に鋭い怒りがギラリと閃いていて凄みがあり、胸に迫る。ほら、普段寡黙で感情を表に出さない人が怒りをあらわにした時って凄くかっこいいでしょ。あれと同じ感覚です。もっとも、時代背景とかややこしい商売の話をわかりやすくまとめる手腕は流石のもので、星新一の面目躍如。ビジネスに興味のある学生は読むべきだわ。

人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)

人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)