「悪魔のような女」

「恐怖の報酬」の他の追随を許さない最強のサスペンスぶりと比べると若干弱いことは否めないが、それでも十分楽しめる傑作。これだけありがちな題材なのに次どうなるかが気になってしまい目が離せないのはひとえに演出の丁寧さと巧みさによるものだろう。
凄くイイ!と思ったのが妻役ヴェラ・クルーゾー(当時のアンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の奥さん)の演技。この人、「恐怖の報酬」の時は「なんか美空ひばりみたいだなー」と思ったが、今回はそうでもなかった。最初は愛人役シモーヌ・シニョレのさばさばした演技がかっこよかったので、妻の殺人計画に臨んでの煮え切らない態度・実行後の落ち着きのなさに「いい加減腹をくくればいいのに…!」とやきもきしていた。だが、実際に自分がこんな状況に陥ったら愛人ほど冷静でいられないよなーと思い至った瞬間から、あっという間に妻のキャラクターに感情移入、ヴェラ・クルーゾーの神経質な演技に魅せられた。ラストの迫真の演技も凄いです。
シャルル・ヴァネルは飄々とした感じがよかったのに大した出番がなくて残念。でも大変なことになっていた「恐怖の報酬」の時とはまるで別人で驚いた。
あと、さりげなく生徒の一人で「禁じられた遊び」のミシェル少年ことジョルジュ・プージュリーが出演。ちょっと大きくなってた。

悪魔のような女 [DVD]

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