「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」

※今回は、万博を体験していない世代向けのレビューです。

大傑作と評判の上、「アッパレ!戦国大合戦」は問答無用の名作だったので期待しまくりで見てみました。
結論は、うーん、出来はいいし面白いんだけど、やっぱり無類の完成度を誇る「戦国大合戦」には及ばない感じ。
いや、もちろん私は万博世代じゃないんでノスタルジーの醍醐味を存分に味わえなかったっていうのもあるんですが。
個人的には昔の文化とか雰囲気凄く好きだし、NHKの「そういえば あの時この歌」で昭和の光景と名曲の数々にしみじみしたり出来てるから大丈夫かなーと思っていたんだけど、やっぱりムリだったか…。ルーカスの「アメリカン・グラフィティ」はその時代を知らないにも関わらず大好きなんだけどなorz。山田洋次の「家族」もけっこう良かったし。
なんていうか、昨今の昭和レトロブーム全般にも言えることなんですが、当時のヒット曲とか風景そのものの素晴らしさを堪能するんじゃなくて、単に自分の青春と重ね合わせて懐かしむというのが第一目的になっているのがしっくり来ないのかもしれません。それらに喚起されるような青春時代を持たず(だってまだ生まれてないもん)、単純に当時の文化そのものを素敵だと感じている身としては、折角の名曲や生活様式がただのノスタルジー喚起装置というか、記号・道具みたいな扱いになっているような気がして残念でなりませんでした。当時を生きていた人限定!みたいな排他性がどうも…。
まあでも、映画自体はなかなか面白かったです。前半はギャグの切れが悪いし中盤の山場であるカーアクション(あれブルース・ブラザーズじゃん)もイマイチ盛り上がりに欠ける感じでノリきれなかったんだけど(後から考えてみると、これは子供達がメインのシーンで明らかに全体テーマとかみ合っていないから浮いていたのは必然)、その分クライマックスに向けての盛り上がりは凄かったです。特に野原一家揃っての高所恐怖症スラップスティックはギャグの王道ともいえる作りで爆笑。核となるテーマがシリアスなモノなのに肝心なシーンの鍵となるのが「足の臭い」っていう猛烈な脱力加減も素敵でした。ラストのしんのすけの激走(劇画タッチになるところがいい!)も燃えましたよ。
ただこれ、やっぱり「クレヨンしんちゃん」じゃないよね(笑)。件の激走シーンも「お前そんなアツいキャラじゃないだろ」みたいな。いつものしんのすけのギャグが映画全体のクサさに対する照れ隠しみたいになっていたのはびっくりです。
それにしても思ったのが、私の世代が今生きている時代は未来において「懐古しうる過去」では無いのかもしれないということ。情報化社会の弊害で情報の送り手も受け手も多様化しちゃったから「みんなが歌って涙する名曲」とか無さそうだし、歌手・タレントの入れ替わりも、熱しやすく冷めやすい性質に拍車がかかって流行の移り変わりが激しすぎるし。正直この「オトナ帝国」の面白さをしっかり堪能できる世代の方が羨ましいです…orz。