「ユナイテッド93」

前評判どおり、手に汗握る緊迫感でした。+手ブレカメラのせいでちょい酔いました。でもなんていうか、この映画を映画として正当に評価できるのは9.11をリアルタイムで体験していない何十年後かの人たちのような気がする。普通の映画は、何かの事件を扱う際、抽象化することで真実を掴もうとする。でもこの映画はそれとは正反対のスタンスで、抽象化からできる限り遠ざかろうとしている。ひたすら「事実」を描こうとしている。でも今の観客である私たちは、テレビを通して自分の目で目撃したあの貿易センタービル崩壊という強烈すぎるビジュアル・イメージを既に得てしまっている。私たちはこのイメージによって惹起される悲劇という抽象概念を、その「事実」っぽい映像の上に重ねずには居られないのだ。その過剰さはもしかしたら、真実からはかえって離れてしまうことを意味するのかもしれない。
ただ、私はいつも昔の戦争映画とかを見る際に「リアルタイムでこの事件を見ていた人ができるだけ事実に即して映画を作ってたら凄いものができただろうなあ」という感想を抱いてきた。今回はそれができたのである。その意味では、凄く貴重な映画であると思う。