「メトロポリス」(1926年、独)
ドイツの巨匠フリッツ・ラングによる、サイレント期SF映画の金字塔。
「カリガリ博士」といい「吸血鬼ノスフェラトゥ」といい、この時代のドイツ映画は素晴らしすぎる。ドイツ表現主義と呼ばれた独特の暗さと妖しさ、シャープさをもつ美術表現は今見ても斬新だ。この作品では、光と影をうまく利用して描いた未来都市もさることながら、人造人間「マリア」が完璧といってよいほどの美しさである。ぞっとするほどの造形美はただごとではない。役者の演技は大げさでメイクも濃いが、これはおそらく歌舞伎と同じ様式美として見るべきだろう。それがまた未来派ゴシックとも呼ぶべき背景美術にマッチしている。映像芸術の名に恥じない、見ているだけで満足できる傑作だ。
見ているだけで、と書いたが、じつはこれ、映像以外に注目すると「何じゃこりゃ」状態となる作品でもある。ストーリーは適当もいいところで、特にラストなどはやけくそに近い。つまり「見ているだけにしておいたほうが良い」作品なのだ(笑)。もっとも、これはオリジナルがあまりに長すぎるので(なんと三時間あったらしい)、半分近くカットされた状態で公開されたということも考慮に入れなければならないだろう。カットされたパートに関しては現在も復元作業が終わっていないとのことである。
私がこの作品を見るのはこれが二度目。一度目はストーリーのひどさにあっけにとられてどうにも不満な状態だったが(その上私が見たのはジョルジオ・モロダーによる彩色&ロックミュージック付きバージョン。これは良くない)、今回は話の筋がわかっているので映像に集中でき、その素晴らしさを実感した次第。「キング・コング」の時も感じたが、あまりに古い作品を見るとき現代人は、(その作られた年代を頭で理解してはいても)最初はどうしても現代の尺度で作品を見てしまう、もしくはその時代のペースにに自分の鑑賞ペースをあわせることで手一杯になってしまう。その作品の本当の面白さを味わうためには、名作と呼ばれる作品は二度見ることをお勧めします。
追記。監督のフリッツ・ラングは写真で見たところ片眼鏡もオシャレなダンディ紳士。かっこいいです。
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 1998/03/25
- メディア: DVD
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
↓「Preview」をクリックしてどうぞ。
http://videodetective.com/home.asp?PublishedID=82063