「L.A.コンフィデンシャル」(1997年、米)
先日紹介した「グッドナイト・アンド・グッドラック」のデヴィッド・ストラザーンを確認したく、久しぶりに見返してみた。
いやあ、良く出来てますねえ。サスペンスとしても、アクションとしても、人間ドラマとしても楽しむことが出来る。素晴らしい。前半の台詞で後半の展開を暗示する緻密な脚本は見事の一言。二度見れば「あれがあそこにつながるのか!」と合点が行くこと請け合いだ。それだけでなく、全体的に台詞がよく練られていてオシャレ。二つの意味をかけたりしている場合が多いので、字幕を追うだけでなく耳でも頑張って聞けば面白みがぐっと増すはずである。展開がスピーディな上に登場人物の名前が覚えにくい(エド、バド、シド、バズは初見時こんがらがって仕方がなかった)という難点はあるが、それも展開と見せ方の工夫で観客をぐいぐい引っ張っていくパワフルさでカバーしている。過激なバイオレンスシーンもユーモアのある演出でサラリと見せているのが上品だ。
登場人物がみな一筋縄ではいかないクセモノばかりなのもこの作品の大きな魅力である。中でも、お洒落刑事ジャック・ヴィンセンズを演じたケヴィン・スペイシーが絶品。良い声をしている上に台詞回しが滑らかなので、耳に心地よい芝居なのだ。それに、微妙な表情の変化が憎らしいほどに達者である。この人はうさんくさーい人物を演じさせたら右に出るもの無しだ。ただ、「アメリカン・ビューティ」でアカデミー主演男優賞を取って以降は割と普通の役ばかりやるようになってしまってつまらない。今度やるスーパーマンでは悪役レックス・ルーサーをやるそうだが、そういうストレートなキャラじゃあこの人の持つ面白みは発揮できないだろう。再び善人だか悪人だかわからない不敵な人物を演じるようになって欲しいものだ。
暴れん坊刑事バド・ホワイトを演じたラッセル・クロウも素敵。暴れているシーンは恐らく地でやっているのだろうが(笑)、繊細な心情変化もきっちり表現しているところは後のオスカー俳優の面目躍如だ。とにかく男臭さ全開のカッコいいキャラクターなので、これは一種の儲け役。個人的にはラッセル・クロウはオスカーを獲得した「グラディエーター」のマキシマス役よりもこの作品の方が輝いているように思う。
ダドリー・スミス役のジェームズ・クロムウェルも印象深いが(以前この作品をテレビ放映したとき、前の週だか前日だかに放映されたのが、よりにもよってあの「ベイブ」だった。「ベイブ」を先に見ていた私の友人は本作での彼を見てのけぞったそうな)、今回ツボだったのがケヴィン・スペイシーとダニー・デヴィートのツーショット。「オースティン・パワーズ:ゴールドメンバー」を鑑賞しておけばこのコンビには爆笑必至である。
お目当てのデヴィッド・ストラザーンはといえば、以前見たときの印象としてはほんのチョイ役だったのに、今回確認したら意外としっかり出ていたので驚いた。口ひげの有る無しだけであの渋いオジサマがこんなにもスカした軽薄そうなオヤジに変貌するのかと感心。ダンディーさは相変わらずだったが。
役者の魅力のみならず、映画全体の雰囲気も1950年代のLAの優雅さといかがわしさを表現していて興味は尽きない。当時の車が数多く出てくるのもおいしい。巨匠ジェリー・ゴールドスミスの音楽もかっこよく秀逸。エンド・クレジット後にちょっとしたオマケもある、サービス精神旺盛な傑作である。
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