「死の迷路」(フィリップ・K・ディック著 山形浩生訳 東京創元社)

 浅倉久志訳に馴染んだ身としては山形浩生訳は口語体過ぎて最初のうちちょっと違和感があったが、後半は慣れて普通に読めた。群像劇?的なパターンの作品としては「ユービック」や「虚空の目」に比べてやや落ちるものの、美しさ、みずみずしさ、おぞましさ、切なさを兼ね備えた世界崩壊の描写はこの作品でも健在。「生きている模型ビル」や「筏の上の炎上する死体」など、シュールなイメージの数々が読者の頭の中に映像を喚起する。オチは「またそのパターンかい!」と思ったがこれはこれで安定していて良し。

死の迷路 (創元推理文庫)

死の迷路 (創元推理文庫)