「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」

ネタバレあります。


 子供の頃に見たときはやたらに暗くて怖くて病んでいる印象が強かったのだが、今見直したらぜんぜんそんなことはありませんでした。ノリノリじゃん。「バットマン・リターンズ」の方が数倍どよよんとしてる。以前見たときに悲しかったのが、ジャックが「クリスマスの楽しさ」に目覚めかけていたのに、自分なりのクリスマス計画が無残にも失敗した(善意で行ったことが理解されずに攻撃されるというのも切ない…)ことで「俺はもともとそういうキャラじゃなかったのだ」みたいに自分から変化を拒絶するところ。当時はこれがなんだか可哀想でやりきれなくてしょうがなかったのだけれど、改めてみるとめっちゃノー天気ですやんジャック。っていうかカッコイイよね。へこたれない性格もさることながら、デザインが非常にグッド。ひょろ長いガイコツなのに動きや表情に色気があって愛らしい。声も素敵です(ダニー・エルフマンの歌声もいいけど、初見時の吹き替え版市村正親が印象的で好き。映像の情報量がもの凄いから、これは吹き替えの方が映画を隅々まで楽しめて良いなあ)。それから、ジャックのキャラクター及びストーリーがちょっとプレストン・スタージェスの「サリヴァンの旅」に似てると思った。
 作品全体を統一する不気味&ポップなデザインセンスがとにかく凄い。みんなのうたの「メトロポリタン美術館」とかもそうだけど、子供の頃に見たらトラウマ必至、みたいな要素って特別な魅力がありますよね。この作品なんてそこんところのストライクゾーンど真ん中なんじゃないでしょうか。コマ撮り特有のぎこちないざわざわ感、最高です。音楽は評判良いし魅力的だけど、編曲が同じような感じだからどの曲も区別がつかないなあ。全編ほぼ歌いっぱなしだから余計につながってる感じが強いのかも。
 あと、さすがディズニー出身のティム・バートン!と思ったのが、ディズニーの名作「ファンタジア」の中の”禿山の一夜〜アヴェ・マリア”とそっくりなヴィジュアル・イメージがたくさん出てくること。墓地、幽霊、炎の表現、光と影の使い方…かなり意識してるようです(ダークさの表現ではもちろん「ナイトメアー〜」に軍配が上がるけど)。こちらも素晴らしい作品なので、見たこと無い人はぜひ見てください。1940年の作品でこのクオリティってのは凄まじいものがあります。ディズニー=子供向け、っていうイメージがあるけど、これは実験的で大人向けな感じですよ。
 個人的にはディズニーアニメ=ウォルト・ディズニー存命中の作品(最近の作品は絵に品が無くてどうも好きになれない)っていう認識なんだけど、昔の作品は本当に凄いです。アニメーションでしか出来ない表現を極めることに執念を燃やしてるのがよくわかる、ちょっと狂ってるような実験的な作りがたまりません。特に「ダンボ」と「ふしぎの国のアリス」のシュールさとダークさはやばい。こういう作品を見ると、明るくてハッピーなところよりも、闇を描いた時こそディズニーの真価が発揮されているような気がします。そういった点からも、この「ナイトメアー〜」は久しぶりにディズニーらしさを見られたという感じでした。

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス コレクターズ・エディション [DVD]

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