「アパートの鍵貸します」

見ていると胸がぐりぐりと締め上げられるような切なさを覚える恋愛映画の名作。紹介文にはよくコメディと書かれているが、ちょっと違うような気がする。笑いどころもギャグというよりはユーモアに近いものが多く、爆笑を狙ってではなく切なさを際立たせるための対比といった効果をあげている。ビリー・ワイルダーは抱腹絶倒の艶笑モノのイメージが有名だが、この作品や「サンセット大通り」「深夜の告白」といったダークな味わいのあるシリアスな人間ドラマの方がはるかに凄みがあって素晴らしい。よく言われることだが、この作品での脚本の上手さは神がかり的!特に小道具の使い方、台詞の妙といったら唸ってしまうほどに凄い。
ジャック・レモンの演技はもちろん上手いのだが、彼の達者な芸であの卑屈なキャラクターを演じられるとあまりに生々しく、見ていて申し訳ないような気持ちになってしまった(笑)。
シャーリー・マクレーンの演技は素晴らしすぎて感涙ものだ。本当にキュートで魅力たっぷりだし、ヒロインの心の変化を絶妙の表情で表現している。フレッド・マクマレイの裏切りに絶望する姿のいじらしさ、ラストでジャック・レモンのもとに向かう時の疾走する横顔の美しさといったら。これでオスカー取れなかったのは間違っとる!

アパートの鍵貸します [DVD]

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