「コープス・ブライド」

嫁さんとのラブラブ生活がうまくいっているせいか最近負のオーラが明らかに不足しているティム・バートン。「ビッグ・フィッシュ」も「チョコレート工場」も評判ほどには楽しめなかったのですが、この「コープス・ブライド」だけは予告を見た瞬間に「おかえり、ティム!!」と狂喜してしまいました。だってもう、画面から待望の負のオーラが溢れんばかりに(笑)。

で、実際に見たところ、うむ、暗い美しさはいいんだけど、やっぱり幸せオーラがはみ出てるよ、ティム(苦笑)。って感じでした。心の底から孤独、っていうムードが無かった。

映像はとにかく凄い。背景美術は抜群に美しいし、キャラクターの動きもコマ撮りアニメとしては驚異の滑らかさですよ。もう生きてるとしか思えない。DVD特典映像でメイキングを見たときには、動かないパペットのあまりの”人形っぽさ”にぎょっとしたくらいだもの(関係ないが、メイキングに登場したダニー・エルフマンは心なしかムスカに似ていた)。風に揺れるコープス・ブライドのヴェールの動きは溜息モノの美しさです。ただ、死者の国に出てくるキャラクターのデザインは基本デザインがガイコツと共通してるので、「ナイトメアー〜」の何でもアリなデザインに比べ面白さが足りないかな、という感じはしました。主要キャラクター+生者の国の人たちのデザインは文句なし。

(以下少しネタバレ入り。)
逆にちょっと雑に感じたのが音楽の使い方で、オープニングからノリノリで歌ってたもんだから「ナイトメアー〜」同様歌い倒すのか?と期待していたら、意外と曲数が少なめ。クライマックスには一曲も歌いませんでした。見せ場に一曲ぐらい入れてよ。っていうかラストはやっぱり歌って締めてほしかったな。なんというか、「普通に語るだけだと盛り上がらないところは歌にしておこう」みたいな、弱いところの補強的スタンスがちょいと残念でした。ミュージカルシーン自体はやはりディズニーっぽくて好き(思い出すのはここでも「ダンボ」のピンクの象シーン)。でも最近のティム・バートンの原色の使い方はあまり好きじゃないかも。以前はベースが白黒の中に味付け程度の原色を配することで暗いながらもゴージャスな美しさが出ていたんだけど、この頃はどぎつさの方が強くなってる感じ。生者の国の寒々しい感じは最高なんですが。

あとは、随所に散りばめられた映画関連の小ネタが楽しいです。ボーン・ジャングルズの名はタップダンサーのボージャングルズ・ロビンソンから取られているし、歌はキャブ・キャロウェイを意識したもの。他には、「風と共に去りぬ」のパロディまで出てきます。物語の後半からラストにかけての展開はウーピー・ゴールドバーグのいない「ゴースト」といった趣。よくできてますね。

それにしても、「ハウル」といいこれといい、2005年度のアカデミー賞長編アニメ部門はレベル高いなあ。受賞した「ウォレスとグルミット」を見るのが楽しみ。

ティム・バートンのコープスブライド 特別版 [DVD]

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