「お茶漬の味」

お茶漬けを作って食べるシーンが全編中のハイライト、という恐るべき作品。音楽も台詞もほとんど無く、ただお茶漬けを作って食べるという行為がなぜか目が離せない美しさを放っていて驚きです(個人的には佐分利信が料理する木暮実千代の着物の袖を持ってあげるシーンがほほえましくも感動的で素晴らしかった)。
今まで見てきた小津作品はおっさんたちのしょーもない馬鹿話が面白かったのですが、この作品ではそれが女達の身勝手で無責任な井戸端会議に変わっています。これはこれで魅力的だけど、個人的にはやっぱりおっさん達の方がかわいげがあって好きかな。おっさんたちの会話は「バカだなあ(笑)」って感じだけど、女達は「ひでぇ(笑)」みたいな。とはいえ、相変わらず話のテンポや台詞のオシャレさは洗練されてて楽しめます。
佐分利信はもっさりした旦那さんを演じて素敵。相変わらず仏頂面ですが、奥さん思いのぬぼっとしたキャラクターに好感が持てます。笠智衆は意外なところで出てきたので驚きました。しかも若い(笑)。今回のが実年齢に近い役なんでしょうが、普段がいつも老け役なので逆に「若作りしたんじゃないのか」と勘繰りたくなってしまいました。
女優陣は皆女らしい身勝手な役柄を魅力たっぷりに演じていて流石の一言。容姿のゴージャスさも素晴らしく、改めて小津さんは美人を取るのがうまいなあとため息をついてしまいます。特に淡島千景の上品な美貌と津島恵子のういういしい可愛らしさは絶品!
細かいところでは、カロリー軒の看板が可愛くて良かったです。

お茶漬の味 [DVD]

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