「ホテル・ルワンダ」

ミュンヘン」みた翌日にこれですよ。きっつい…orz。なんかヘヴィーな連休になってしまった。
映画自体は、評判が高かっただけあってなかなかの出来だった。まず、主役のポール・ルセサバギナを演じたドン・チードルが素晴らしい。最初はやや軽薄などこにでもいるフツーのおっさんだったのが、だんだん自体がのっぴきならない状態になるにつれて、表情がどんどん崇高な険しさを帯びてくる。その変化が凄まじい。これだけでも一見の価値ありだ。それから、話の展開も事実とは信じられないくらい凄い(脚色はどの程度してあるんだろうか?関連する本などがあったら読んでみたい)。ルワンダでの虐殺事件の存在をここまで世に知らしめたということもこの映画には大きな価値がある。
ただ…心苦しいことにこの映画、手放しでは褒められない。映画でこの事件を知った身としてはあまり大きなことは言えないのだが、少なくともこの映画を見る限り、ルワンダでの大量虐殺という事実の重みに対して、映画自体の出来が無難すぎる気がするのだ。何しろ死者の数が尋常じゃない事件である。悲劇としての重さは「こんなもんじゃない」。見ている間、そういう気持ちが拭えなかった。主人公ポールの置かれた状況だって、これ以上ないくらい精神的にに過酷なものである。たしかに映画は”良く出来ている”。だが、起こってしまった事件、事実に見合う恐ろしいまでの出来だったかというと、残念ながらそこまでは達していないと思う。より多くの人に見てもらうためにあまり過酷な描写を入れるのは避けたのかもしれないが、これだけの題材ならもっともっと凄まじいものが出来たはずだと感じられてならないのである。普遍的なものを訴えたいがために、内容を一般化しすぎてしまったのではないだろうか?特にディテール。ああいう状況に置かれた人にしか知ることの出来ないハッとするような細部が十分にすくい上げられていなかったと感じた。それができていれば、主人公の崇高さを更に際立たせることが出来ただろうに…。なんというか、凄く「もったいない」。
これは特に映画的な語りの技法の限りを尽くして観客の感情に訴えかけることに成功した「ミュンヘン」を見た直後だから感じたことかもしれない。「ミュンヘン」に比べて、この「ホテル・ルワンダ」は愚直なまでにストレートだ。それがパワフルな推進力となっているのも確かだが、それでもまだ、映画としての爆発力が足りない、と思う。
でもこれでルワンダの事件について知りたいと思ったのは確か。今度資料を探してみよう。