シュヴァンクマイエル祭り

昨日、私にシュヴァンクマイエルさんを教えてくれた友人と一緒に新作「ルナシー」とレトロスペクティブ企画でリバイバルの「悦楽共犯者」を見てきました。


「悦楽共犯者」

ヤン・シュヴァンクマイエル 悦楽共犯者 [DVD]

ヤン・シュヴァンクマイエル 悦楽共犯者 [DVD]

モーニングショーだったんですが、朝っぱらからこんな爽やかさの欠片もない変態映画をやっていいものなのかと(笑)。
最初いきなり映写ミスで途中から始まってしまうトラブルがあったものの、映画自体の出来が良かったので愉しく見ることができました。
シュヴァンクマイエル翁の作品は短編の方がパンチ力と切れ味がいいんだけど、長編は丁寧にじっくり練って作ってあるのがよくわかってそれもまた良し。特にこの「悦楽共犯者」は細かい描写まで丹念に練りこまれてあって完成度がめちゃめちゃ高いです。悪夢的で目眩がするような感じは「ファウスト」の方が上だけど、見ている最中の心地良さと爆笑度はコチラの勝ち。
前半は明らかに伏線張りで、過程自体が面白いもののテンションとしては若干おとなしめ、後半どうなるかわくわくしながら見てたんですが(この「なんだかよくわからない現象に法則性を見つける」のもシュヴァンクマイエル作品を見る醍醐味の一つ)、後半見事に炸裂しました。すげえ。もう、あのニワトリ仮面の動きなんかキタ――(゚∀゚)――!!ですよ。ばらばらに見えていた要素の隠されたつながりが明らかになる過程も見事。アカデミー賞も「クラッシュ」に賞をあげるならこっちにもあげるべき(笑)。
個人的にはニワトリ仮面のおじさんが好きですねえ。髪型のラブリーさも含め。でもなんといっても爆笑してしまったのは口髭のおじさん。収集しているものがまるで方向性のつかめないものばかりで「何がしたいんだろう」と思っていたら、まさかあんな使い方をするとは…。見た目ちょっとナイスミドルな感じだけにやってることとのギャップが変すぎです。超ローテク装置で激しくエクスタシー感じている様には恐れ入りました。周りがわりとシーンとして見ていたんで噴出すのをこらえるのが大変だった…。あと、アナウンサーの女の人もさりげなくいい味出してました。
余談ですが、見終わった後チキンが食べたくなり、友達と一緒にチキンカレーを食べました。
http://www.rajmahal.gr.jp/


ルナシー
オフィシャルサイト→http://www.a-a-agallery.org/event/lunacy/
こちらは新作なんですが、「あれ?」って感じ。なんか、いつもと雰囲気違う…。意味不明度が低いです。笑いもあんまり無し。ストーリーがあって、台詞もたくさんあるし、かなり普通っぽい(この題材で普通ってどうなのよって気もしますが)。今までのシュヴァンクマイエル作品は見たこともないようなイメージのオンパレードでそこが魅力だったのに、今回のはわりと見たことのあるイメージで済ましてるので物足りないです(サド侯爵ネタだから当たり前だけど「クイルズ」に似てる。「ルナシー」の方が病的ではあるけど)。それまでは不快感を突き詰めて快感にまで高めていたところを、今回は不快感のままで留まっちゃってるみたい。映画冒頭で監督本人が出てきて「これはホラーです。芸術性を求めてはいけない」みたいなこと言ってたけど、今まで作ってきたモノがモノだけにやっぱり期待しちゃうじゃないですか。しかもホラーの割にあんまり怖くないし。怖さで言ったら、これまでの作品の不条理な不安感の方がずっと怖い。伝家の宝刀のアニメーションも皮肉成分が不足気味です(肉はたっぷりだけど)。後半の羽毛人間以降はテンションも上がってきて面白かったけど(院長がやはりナイスミドルで素敵だ)、前半がどうにも眠かったなあ。オチも綺麗にまとめすぎてる気がするし。どうしちゃったんだヤン翁…。


今日は「アリス」を見てきます。