「タイタニック」

 改めてみるとこの作品、これ以上無いってくらいに王道なロマンスものですね。普通だったらちょっと色気を出して美味しい脇役とか主人公の意外な欠点とかいった味付けを描きそうなものなのに、そういうところを綺麗さっぱり排除していて潔さすら感じさせます。しかもそういった付加要素無しに三時間超の長丁場をだれることなく描ききった。エピソードの時間配分も過不足無く、見事です。これは文句なしにジェームズ・キャメロン監督の手柄ですね。ただ、船が沈没し始めた後にある主役カップルと恋敵の追いかけっこ。あれは無い方がいい。特に船内でインディー・ジョーンズ張りのアドベンチャーを見せてしまうのはやりすぎです。見ている分には楽しいけれど、スケールが一気に縮まってしまう上、話全体のバランスを考えると明らかに浮いているし、無くても何の支障も無いシーンでしょう。実際に起こった悲劇と言うことを考えるとノー天気に過ぎるような気もします。
 今回個人的にツボだったのがバーナード・ヒル演じる船長のヒゲの美しさ。色といい形といい、見れば見るほど完璧です。テリー・ギリアムの「バロン」に出てくるユマ・サーマンよろしく、ヒゲフェチになってしまいそうな勢いです。あと、船員さんがみんなかっこよかったのも最高でした。
 それから、ジェームズ・キャメロンが強い女好きなのは周知の事実なのですが、「マサカリを握り締めて恋人の元に駆けつける乙女」というシーンはちょっと笑ってしまいました。全体的に非常に大衆を意識した作りの作品なのですが、ここだけはキャメロンの趣味が炸裂してしまった感じですね。画的にも「シャイニング」を髣髴とさせる危険な香りがして素敵です(笑)。